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解説編その11:相続登記の義務化など

解説編6では、遺産分割の方法を具体的に説明しましたが、相続人の間で遺産分割協議がなかなかまとまらない間に、時間だけ経過してしまうこともあります。そのような場合に、相続不動産の名義を被相続人のままにしておいてよいのか、という問題があります。

1.相続登記の義務化

この点について、相続法の改正により、令和6年4月1日から、相続登記を申請することが義務化されました。
具体的に言いますと、相続によって不動産を取得した相続人は、相続があったこととその所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象となります。なお、細かく言いますと、令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合は、令和6年4月1日から3年以内、すなわち令和9年3月31日までに、相続登記の申請をするのでかまいません。
このように、相続人の間で遺産分割がまとまっていない場合は、とりあえず相続登記だけでもしておかないといけないことになったわけです。
この場合に、具体的にどうすればよいかということですが、相続人の間で遺産分割協議がまとまっていないのですから、全相続人が共同で相続登記を申請するといった信頼関係が崩れている場合も多いことと思います。そのような場合には、各相続人は、民法の保存行為という概念に従い、単独でも全員のために相続登記を申請することができることとされています(むしろ、当該相続人の法定相続分だけを登記するということはできず、全員のための相続登記を申請することしかできないとされています)。ただし、まだ遺産分割協議ができていない状況ですから、法定相続分に従った共有にするという登記ができるにとどまります。そのうえで、遺産分割協議がまとまった段階で、最終的な所有権または持分の取得内容になるように持分移転もしくは更正の登記を改めて行うことになります。

2.相続人申告登記の新設

このように、いったん相続登記の申請をしておくという面倒なことをしないわけにはいかなくなったのですが、相続登記の申請のためには、法定相続人の範囲を確定するための被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本をすべて取り寄せて添付することや、相続登記のための登録免許税の納付を要する、といった負担も伴います。
こういった負担を伴うことを回避するために、令和6年4月1日からの改正相続法では、相続人申告登記という新たな登記制度が設けられました。具体的には、相続登記を申請する義務を負う者が、対象となる不動産を特定したうえで、相続が開始したことと、自らがその相続人であることを3年以内に登記官に対して申し出ることによって、申し出をした相続人の氏名と住所だけを表示する相続人申告登記という登記がされ、それがなされれば、申し出をした相続人が相続登記の申請義務を履行したものとみなすこととされました。
この相続人申告登記は、相続登記と違って、全員のための登記ということはなされず、したがって、他の法定相続人の氏名・住所や各法定相続人の持分は登記されませんので、申し出に際しての添付書面は、申し出をする者が相続人であることがわかる書類(当該相続人の戸籍謄本)で足りることとなるなど、簡単な手続きですみます。
ただし、その後に相続人間で遺産分割協議が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりませんので、その点は注意が必要です。

3.専門家が必要となる、複雑な場合は?

以上のとおり、相続登記の義務化や相続人申告登記という新たな制度自体は、それほど難しい問題ではありませんが、遺産分割をめぐって争いが生じている場合に、それに付随して、不動産の登記をどうすればよいか、という判断をする必要が生じることも多いかと思います。それらも含めて、弁護士や司法書士などの専門家に、気軽にご相談ください。

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