相続、遺言、あらゆる法律相談は、兵庫神戸のかけはし法律事務所へ。

解説編その7:債権についての考え方

解説編その2では、相続財産の範囲について簡単に説明しました。今回は、その中でも特に債権について解説します。

1.預貯金債権以外の可分債権について

被相続人が有していた第三者に対する損害賠償請求権等、金銭の支払いを目的とする債権(金銭債権)についても、相続の対象となります。しかし、このような金銭の支払いを目的とする債権は、可分債権とされ、相続が開始した時点(被相続人が亡くなった時点)で、法定相続分に応じて当然に分割されます。相続人全員が合意することにより、遺産分割の対象とすることはできますが、合意がない場合には、相続人がそれぞれの法定相続分に応じて債権を取得することになります。

2.預貯金債権に関する例外

かつては、預貯金債権(銀行に対して預金の引き出しを求める権利)についても、他の金銭債権と同様に考えられていました。すなわち、相続財産に預貯金がある場合、相続人の全員が合意すれば、遺産分割の対象として分け方を協議や調停、審判等で決めることができますが、誰か一人が遺産分割の対象とすることに合意しない場合は、遺産分割の対象とはできませんでした。これにより、たとえば、特別受益を得た相続人が、預貯金を別途法定相続分に応じて取得しようと考え、預貯金を遺産分割の対象とすることに合意しない等、不公平な事態が生じることもありました。
しかし、近年最高裁が、預貯金債権に関しては上記の考え方と異なる判断をしました。すなわち、最高裁は、従来の判例を変更し、普通貯金、通常貯金、定期貯金のいずれについても、「いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」と判示しました(最判平成28年12月19日)。さらに、定期預金及び定期積金についても同様に「いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」と判断しました(最判平成29年4月6日)。
この判例変更により、相続人の一部が同意しなかったとしても、預貯金については遺産分割の対象とすることができるようになり、上記のような、特別受益を得た相続人が、預貯金を別途法定相続分に応じて取得しようと考え、預貯金を遺産分割の対象とすることを拒絶するといった事態は生じないことになりました。この扱いは、このたびの相続法改正後もそのまま続いています(ただし、預貯金の3分の1までの額については、遺産分割が成立する前に緊急に使う必要があることも多いことから、なお相続分に応じて当然に分割されたものと扱って、各相続人が単独で払い戻しを受けることも可能となりましたが、やや複雑な問題ですので、ここではこの程度の説明にしておきます)。

3.相続開始後の債権(相続財産である不動産から発生した賃料等)の取り扱い

では、相続開始時には存在しなかったものの、相続開始から遺産分割までの間に、相続財産から債権が発生した場合はどうなるのでしょうか。典型的なケースとしては、相続財産の中に収益物件が含まれており、毎月賃料が発生しているような場合です。
まず、相続財産そのもの(収益物件)と、相続財産から生じる果実(収益物件の賃料)は、別々の財産として扱われます。不動産と、不動産の賃借人に対して賃料を請求できる権利は、それぞれ独立した別の財産であるということです。そして、相続開始から遺産分割までの間は、相続財産である不動産は、相続人が法定相続分にしたがって共有することになります。それでは、賃料はどうなるのかというと、相続開始後に発生した賃料は相続財産とはならず、不動産(収益物件)を共有している相続人が不動産に対するそれぞれの持分(すなわち法定相続分)に応じて、当然に取得することとなります。理論上は、なんらの合意もしなくても、相続開始後に発生した賃料は相続人が法定相続分にしたがって取得することになるということです。
このような考え方を前提に、実際にどのような処理となるかについて検討します。賃料が、相続人らが新たに開設した口座に入金されている場合、その口座に入金されている賃料は遺産ではないため、相続開始から遺産分割までの間に発生した賃料については、当然に相続人が法定相続分にしたがって取得することになります。ただし、相続人全員が合意した場合には、これらの賃料も遺産分割の対象にすることができます。合意がない場合には、遺産分割とは別に、相続開始から遺産分割までの間の賃料を分けることになります。実務上は、相続人全員が相続開始から遺産分割までの間の賃料についても遺産分割の対象とすることに合意する方が、手続きはスムーズに進むでしょう。

4.専門家が必要となる、複雑な場合は?

以上のとおり、相続財産の中に債権が含まれている場合に、預貯金債権か、それともその他の債権(例えば第三者に対する損害賠償請求権)かという債権の種類によって扱いが異なります。また、相続人間での合意の内容によって、どういった処理となるかも異なります。相続財産や相続開始後に相続財産から生じた収益等の中に、どのように扱うべきか不明なものが存在する場合には、弁護士などの専門家に、気軽にご相談ください。

予約受付はこちら

主な取扱い事件

PAGETOP
Copyright © Kakehashi Low Office All Rights Reserved.