アスベスト被害に関する労災申請を行うと、労基署が必要な調査を行い、認定要件を満たすと労災認定されます。労基署がどんな調査をしたのかは、労災記録に綴られている「調査結果復命書」とその調査資料を見れば分かります。

調査内容や調査資料は事案によって異なりますが、アスベスト労災の場合、大きく分けて①仕事(石綿ばく露作業)に関する調査、②病気(石綿関連疾患)に関する調査が行われます。労災記録には、被災者や遺族が提出した申請書類等(請求書、戸籍謄本、死亡診断書など)に加え、概ね以下のような資料が綴られています。

①仕事(石綿ばく露作業)に関する資料
・被災者の聴取書
・被保険者記録照会回答票(年金加入記録)
・被災者の勤務先会社の商業登記簿謄本
・被災者の勤務先会社への電話照会回答書
②病気(石綿関連疾患)に関する資料
・被災者の聴取書
・診療録・検査結果など医療記録
・主治医などの診断(意見)書、意見依頼書
・地方労災医員の意見書、意見依頼書

これらの資料から分かるとおり、労基署は、被災者の勤務先会社に電話をして、会社としての石綿取扱作業の有無や時期、状況、被災者の作業内容や石綿ばく露状況などを調査したり、石綿関連疾患の診断について、地方労災医員に意見を求めたりします。勤務先会社が廃業している場合などは、別の方法で必要な調査を行います。
また、被災者が存命の場合、労基署の担当官がご本人から聴き取りを行い、「聴取書」を作成することがほとんどです(ご本人の病状などによって、作成されない場合もあります)。
労基署の担当官は、自ら調査した資料と被災者や遺族が提出した申請書類等を踏まえ、被災者の過去の職歴・石綿ばく露作業従事歴に関する「作業歴情報」と石綿関連疾患に関する「医学的情報」を取りまとめ、労災認定要件を満たすか否かについて「調査結果復命書」という報告書を作成します(書類のタイトルは労基署によって異なります)。

「調査結果復命書」を含めた労災記録は、被災者や遺族が労働局へ個人情報開示請求することによってコピーを入手することができます。勤務先会社への電話照会回答書など開示されない(黒塗り)記録もありますが、労災記録は、遺族が被災者の石綿ばく露作業・状況を知る重要な手がかりとなります。【伊藤明子】