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解説編その6:遺産分割の方法

ここでは、解説編その1~5を前提にして、遺産分割とは何をすることなのか、どのような場合にどのような手続をする必要があるのかを、解説します。

1.遺産分割とは何をすることか?

遺産分割とは、被相続人が残した遺産について、どの遺産を誰がどのような形で取得するのかを、相続人全員の間で決めることです。
そう言ってしまえば単純なことですので、相続財産の種類や金額がさほど多くなく、かつ相続人の数も少なく、特に法的に問題になるようなこともないような場合は、簡単に遺産分割をすることができます。預貯金は、相続人全員の実印を押して窓口での手続をすれば払い戻しを受けたり相続人の一人に名義変更することができますし、不動産は、誰がどの不動産を取得するのかを記載した遺産分割協議書という書面を作って相続人全員の連名で実印を押せば、名義変更のための登記手続ができます(具体的な手続は司法書士に依頼されるとよいでしょう)。
しかし、そのように簡単に終わる場合ばかりとは限らず、相続人の間で容易に協議がまとまらないという場合もあります。その場合に考えるべき事柄は、以下のようにいろいろあります。

①相続人が誰々で、それぞれの法定相続分がどれだけか
解説編その1:相続人の範囲と法定相続分
②遺産に含まれる財産は何々か
解説編その2:相続財産の範囲
③相続財産として判明していないものの調査が必要か
解説編その3:相続財産の調査
④相続人の中に特別受益を受けている者がいないか、もしいるとすれば具体的に何か
解説編その4:特別受益
⑤相続人の中に寄与分の認められる者がいないか、もしいるとすればそれはどの程度か
解説編その5:寄与分
⑥被相続人が遺言を残していないか
解説編その8:遺言
⑦以上により、相続人の範囲、分割すべき相続財産の範囲、各相続人の具体的相続分を踏まえて、どの遺産を誰がどのような形で取得するのかを決めるということになります。

共同出版本『法的交渉の技法と実践』に掲載した論考の一部(抜粋)

 2016年8月に共同執筆で出版した『法的交渉の技法と実践』の中で、亀井が自らの経験も踏まえて「遺産分割交渉」の章を執筆しています。
遺産分割事件で、依頼者の方とどのように寄り添い、どこにポイントを置いて解決に結び付けていくのかを、弁護士としての姿勢も交えてわかりやすく説き起こしていますので、是非ご一読ください(ただし、暫くの間は途中までの掲載となります)。

第4章「遺産分割交渉」(P.147~P.164)を見る。第4章「遺産分割交渉」(P.147~P.164)を見る。

2.遺産分割の前提問題を解決しないと遺産分割ができない場合

以上のうち、①~⑥の前提事項自体に不確定な事項があったり、相続人間で争いがあったりする場合には、多くの場合に、遺産分割をすぐに行うことができません。
例えば、①で、相続人の中に行方不明の人がいる場合は、その人を不在者として家庭裁判所に財産管理人を選任してもらう必要があります。②で、被相続人名義の財産になっているけれども実は遺産ではなく自分の財産だと主張して争っている人がいる場合は、その財産が遺産に含まれるのかどうかを確認する訴訟を起こして決着をつけておく必要があります。⑥で遺言書が見つかったけれどもその遺言は無効であると争っている人がいる場合は、その人から遺言無効確認の訴訟を提起し、その点についての決着をまずつけることになります。これに対して、③の特別受益や④の寄与分については、要は各相続人の具体的相続分を決めるにあたって考慮する問題ですので、それらの点に争いがある場合には、家庭裁判所で遺産分割の調停や審判の手続がなされる中で、いっしょにはっきりさせることになります。

3.遺産分割の方法

以上に挙げたような前提問題について先に決着しておく場合はそれを済ましたうえで、またその点の争いが特にない場合は、遺産分割を進めることになります。その場合の、遺産分割の方法は、原則的には各相続人が具体的相続分に応じて遺産を現物で取得する方法をとりますが(現物分割と呼んでいます)、その際には、各相続人の相続分の割合がどれだけかということのほかに、特定の遺産を現在誰が管理占有したり使用したりしているか(例えば不動産に誰が居住しているか、同族会社の経営を誰が現実に担っているか)、各相続人がどの遺産の取得を希望するか、等を考慮して決めることになります。
そのうえで、現実には、相続分どおりに遺産の現物をぴったり分けることができないことも多いですので、その場合は、遺産の一部(例えば不動産や有価証券)を売却して相続人間で分ける方法(換価分割と呼んでいます)や、ある相続人が特定の遺産(例えば不動産)を取得する代わりに他の相続人にお金を支払うという方法(代償分割と呼んでいます)をとることもできますし、これらの方法を組み合わせることも可能です。
なお、遺言があって、その中で特定の遺産を誰に取得させるのかが定められている場合は、遺言が優先しますので、その部分は相続人間で遺産分割を行う必要はありません。その場合は、遺言で定められていない部分についてのみ、具体的相続分を踏まえて遺産分割を行うことになります。ただし、全相続人が合意すれば、遺言と異なる内容の遺産分割を行うことは、もちろん可能です。

4.遺産分割の手続

  • 協議による分割
    まず考えられるのが、全相続人の間で遺産分割の協議を行う方法です。協議が成立した場合は、どのように遺産を分割するか(現物分割、換価分割、代償分割などの方法も明らかにして)をまとめた遺産分割協議書を作成し、全相続人が実印を押したうえで、相続財産の名義変更の手続等を行います。
  • 調停による分割
    分割協議がまとまらないときには、各相続人は、他の相続人を相手方として、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。調停は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。調停申立書には、誰が相続人か、どのような相続財産があるか等の資料をつけて提出します。
    調停手続においては、家庭裁判所が指定した調停期日に、裁判所の調停委員が間に入って、当事者間で合理的な解決方法について話し合いを行うことになります。通常は、相手方と面と向かって話をするのではなく、調停委員を介して話し合いを進める方法が多用されています。そのうえで、話し合いがまとまれば、調停による遺産分割が成立します。しかし、調停期日を重ねても主張や意見の対立が大きいために、話し合いが成立する目途が立たない場合には、調停手続を打ち切り、審判手続に移行します。
  • 審判による分割
    遺産分割調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続に移行します。審判手続は調停手続のような話し合いの場をもうける手続とは異なり、裁判官が双方の主張や事情などを聞き、資料を検討したうえで、遺産分割について決定する手続です。審判手続に移行してからでも裁判官が間に入って話し合いによる遺産分割がなされる余地もありますが、話し合いが成立しない場合は、最終的には裁判官が判断して決定します。その際に、相続人から特別受益や寄与分の主張がなされている場合は、その点についても裁判所が判断することになります。

5 遺産分割登記の義務化

なお、相続法の改正(令和6年4月1日施行)により、遺産分割が成立した場合に、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならず、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象とされることになりましたので、注意が必要です。

6 専門家が必要となる、複雑な場合は?

上に挙げた遺産分割の前提問題を先に訴訟等によって決着しておく必要がある場合を含めて、遺産分割の方法を決めるにあたって相続人間に様々な主張や意見・希望についての対立がある場合は、説得的な主張を展開し、かつ法的に正確な見通しを持ちながら冷静に情勢判断をしていく必要がありますので、弁護士のような専門家に依頼した方がよい場合が多いと言えます。特に、協議が成立せず、調停や審判の手続が必要な場合は、ご本人で手続を進めることもできなくはありませんが、裁判所での手続に慣れている弁護士に代理人として関与を求めた方が、納得のいく良い解決に結びことが多いように思われます。

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